まだ終わらない梅雨の日 サトキチ

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 今年のように8月に入っても梅雨の様な天気が続くのは色んな面で心配事が多い。特に三絃(三味線)を弾く者にとっては一年中で一番心配な時期である。先日三味線を弾こうと思って三味線の入っているケースを開いて見ると皮が破れていた。もしかしてと思って裏面を見るとこちらもである。普段弾いていない方の三絃だったので何となく胸騒ぎがしていた。演奏会や学校授業で弾いたりするにはやはりこの三絃でなくては自分の音が出てくれない。
 三絃を弾く者にとって良い音を出すコツと言うか基本はいかに三味線の皮を破らないように長持ちさせるかである。特に四つ(猫皮)を破いてしまったのでは泣くにも泣けない。皮を張り替えた後は何を節約して暮すかで頭を悩ませる。この様な経験をした事のあるのは自分だけで無いと思う。
 皮を張り替える時に皮を破れないように琴屋や三味線職人にお願いする人がいる。こんな風な事を言っているといくら張り替えたばかりの三味線でも良い響きがするとは限らない。なぜなら破れないように張り方を控え目に張られてしまうからだ。言い換えれば緩く張ってくれと注文を出しているのと同じ意味に成ってしまう。この様な事を知らずにあそこの皮張りは良い音がしなくて下手だと言いふらす人がいるが、三味線屋の肩を持つ訳でも無いが気の毒と言うしか無い。

 皮が破れ経費が嵩んで来て困ってしまうのは誰しも同じだ。破れるのが余り頻繁だと今回は四つは止めて犬皮に替えようかと頭を悩ませてしまう。早い話が音を優先に考えるか、あるいは音を捨ててお金の方を取るかなのだ。手持ちの一番良い三味線で迷う人はいないと思うが、普段の稽古用では人によって判断が大きく分かれるところだ。だが地唄の三味線は四つ(猫皮)を張ってこそ地唄三味線の響きがするのであるから、やはりできるだけ四つを張って置くのが上手な練習方法と言える。この様に考えると良い音の響きを出すにはやはり皮が破れないように長持ちさせるのが一番の方法と言える。
 三味線に張られた皮は湿度の変化に弱い。例えば梅雨の時期や雨の日等では空気中の水分を皮が吸って湿ってしまう。湿り気の吸った皮は張られたまま伸びて弛んでしまうのだ。ところが次の日等に天気が晴れて空気が乾燥して来ると、こんどは皮に吸われていた水分が蒸発して縮み始める。三味線の皮が破れる時には見てる前でもバリと音をたてて破れてしまう。
 梅雨の時期では皮が破れなくても三味線の胴から皮がずれて剥がれる時がある。これも同じ様に空気中の水分が原因である。皮を三味線の胴に張るにはお米からできた糊粉を水を含ませながらねって使う。この糊粉が空気中の水分を吸って接着力を弱めてしまうのがその原因なのだ。

 三味線の皮を破いたり剥がさない様にするにはいつも細心の注意を払う事が必要である。使わない時は外気にさらさない事が一番であり、やはり長いケースに閉まって置くのが無難と言える。弾いたりしている時はエアコンや扇風機の風を胴の皮に当てない事。寒い時期に成ると最近では暖房用のマットを引く家が増えて来た。この様な上に置くのも禁止である。変わった所ではブーンと飛ぶ蚊が三味線の皮を動物だと思って針を挿す時がある。この他に細かい事を言うときりが無い。
 ようするに楽器には常に細心の心配りが大切だと言う事なのだ。上手に良い音で楽器を鳴らす為には弾く事以外にも、普段の手入れや取り扱いにも注意が必要なのである。こんな風に普段から考えているから三味線の皮が破れてしまった夢を見てしまうのかも知れない。その日は祈るような気持で三味線をケースから取り出した。最近では自分の愛用している楽器でさえもが単なる音を出す道具みたいにしか思わなく成って来ている。昔の人は今の人よりも楽器を我が子の様に大切に可愛がっていた話を聞いたような気がする。

次回もよろしく  

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